大腸菌と大腸菌群とE.coliの違い

▽調べることにしましたきっかけ

 

 現在弊社では、自主設備による細菌検査を行っております。その検査項目に大腸菌群とE.coliという欄があります。
 先日、弊社にこのような質問が寄せられました。大腸菌群とE.coliは何が違うかと言うものです。恥ずかしながら、大腸菌群は大腸菌がたくさんいる状態で、E.coliは大腸菌の中でも食中毒になりやすいものを検査する項目である。まあ、それぐらいにしか考えていなかったのです。
 その後、インターネットを主として調べたのですが、私の理解は間違っていたことが判明しました。といいますか、調べれば調べるほどにわかりにくく複雑であるようです。
 こんな理解の状態でレポートを書くのもおこがましく、また正しいことを書いていく自信もないのですが、私が理解した範囲内で、それを押し進めるような形で「大腸菌」「大腸菌群」「E.coli」の違いを書いていきたいと思います。
 ※一部理解に間違いがあるかもしれませんが、そのときはご指摘などお待ちしております。

 

大腸菌

 

▽学名

 

 大腸菌の学名はEscherichia coli(エシュリキア・コライやらエスケリキア・コリ)といいます。この学名を略して大腸菌をE.coli(イー・コライやイー・コリ)と言うそうです。
 ここで1つの疑問なんですが、大腸菌とE.coliは同じ物であると考えてよいか?ということです。大腸菌の学名がE.coliなんですから、同じはずなのですが、食品衛生法におきましてはその検査方法により、E.coliは糞便性大腸菌群というように定義されているようです。

 

▽定義

 

 大腸菌には定義が2つあるようです。1つは細菌学と言いますか学問上の広い意味でとることができる定義。もう1つは食品衛生法状の定義です。

 

▽1.細菌学上での定義

 

 「グラム陰性の棹菌で通性嫌気性菌に属し、環境中に存在するバクテリアの中で主要な種の1つである。この菌は腸内細菌であり、温血動物(鳥類、哺乳類)の消化管内、特に大腸に生息する」といったものです。この時点ですでに「棹菌」やら「グラム陰性」やら専門用語が連発していて、生物をとらなかった私には理解できないところです。
 今回の目的は主に食品衛生上の物ですから、ここではこんな定義なんですよという引用に留めておきます。

 

▽2.食品衛生法上の定義

 

 「食品衛生法の規格基準にある検査法(EC培地において44.5℃で増殖し、ガスを産生する菌)で検出する菌」です。これはどうやら「糞便性大腸菌」を指しているようです。この定義は食品衛生法上の行政用語です。食品衛生法上の定義では、大腸菌(E.coli)であっても、それに当てはまらない菌も多いです。
 

 

 定義が2つある理由ですが、食品衛生法では、衛生や食中毒などに関わることが重要なため、学問的に広い分野で大腸菌をとらえるより、汚染度の目安や悪性の大腸菌をとらえることに重点を置いたことが主な理由だと私は考えています。

 

▽歴史的な考察

 

 名前にも大腸とありますが腸内にいる細菌です。腸内にいることより糞便と関係があります。よって糞便による水の汚染の指標としてかなり早い時期から用いられてきました。

 

▽いろいろな大腸菌

 

 大腸菌(E.coli)はそれぞれの特徴によって、「株」というものに分けられます。これは犬で言うところのプードルや柴犬やらと同じことだそうです。
 そして、それぞれ異なる動物にはそれぞれの大腸菌が生息しています。このことにより大腸菌を調べることのより、大腸菌の由来がわかるそうです。たとえば鳥由来だとか人間だとか…
 大腸菌の株は多数報告されていて、その中の一部は人間にとって害になる物があります。とりわけ毒性が強い物を「病原性大腸菌」というそうです。O-157が有名ですよね。

 

▽大腸菌を調べる目的 

 

 糞便に関係する物には大腸菌がいるのですが、逆を言いますと大腸菌がいるところには糞便による汚染があると言うことです。
 糞便による汚染は大腸菌にとどまりません。たとえば、「サルモネラ」「腸管出血性大腸菌O-157」「ノロウィルス」「赤痢菌」などの汚染が糞便による汚染と結びつきます。
 つまり、大腸菌が陽性(確認できた)とは、大腸菌及び、サルモネラ、O-157、ノロウイルスなど糞便に関わる細菌がいるかもしれないということを意味します。
 食品衛生法でのE.coliは糞便性大腸菌であると書きましたが、このE.coliを調べることにより、糞便性の大腸菌および糞便に関する細菌の有無。または清潔な扱いを受けたかなどがわかることになります。もちろん100%言い切れるわけではないのですが、その傾向が強いや相関関係があるぐらいはいえるのです。

 

▽まとめ

 

 大腸菌にはたくさんの種類がいること。
 大腸菌の種類によって原因となる生物が特定できるらしいこと。
 大腸菌を検査することのより糞便による汚染がわかること。
 E.coliを調べることにより、糞便性大腸菌や糞便に関わる細菌、清潔な扱いの有無などわかるかもしれないこと。
 大腸菌の中には毒性の強い物があること。

 …このような特徴あるものと思われます。

 

大腸菌群

 

▽定義

 

 「ラクトース(乳糖分解し、酸とガスを発生)するグラム陰性、好気性・通性嫌気性で芽胞を形成しない棹菌の全てのこと」大腸菌(E.coli)であってもこれに該当しないものが多く存在する…※

 

▽私なりに定義をかみ砕きますと…

 

 定義では上記のようにありますが、もともと、この大腸菌群は細菌学の言葉ではなく、衛生上の用語だそうです。定義で、ラクトースナンタラカンタラといわれても一般人の私たちにはわからないはずです。かみ砕いて説明しますと、食品衛生上で「大腸菌と及びその類似菌※」と考えてもよいようです。
 もう少し長く言いますと「大腸菌を含む腸内細菌課の他、土などに存在する環境由来の菌を含む一群」です。
 ではどのようなものがその類似菌なのでしょうか?それは主に汚水菌(クレブジエラ属菌、サイトロバクター属菌、エンテロバクター属菌)や土壌中のバクテリアなどが入ります。つまり、人や動物の糞便や土壌中の細菌などが大腸菌群に入るわけです。

 ※大腸菌群を「大腸菌及びその類似菌」と簡単に説明しましたが、これはあくまで食品生成管理上のお話です。細菌学で言いますと上の難しい定義に当てはまらない大腸菌も存在いたします。

 

▽何を調べる物なのか

 

 大腸菌群は、人や動物の糞便に限らず、土壌中など環境中に広く分布しているため、環境衛生管理上の指標菌と考えられています。
 すなわち、生の食品多量の大腸菌群が発見されれば、糞便などの不潔物による汚染があったことが疑わさせ、病原菌の汚染の可能性があると言うことを示します。
 一方、加熱済食品からの検出は不適当な加熱や加熱後の二次汚染など食品の取り扱いの悪さを意味することになります。たとえば、焼いたのだけれど生だったとか、油調後の商品を不潔な手で触ったとか、地面に落としてしまったとかそんな感じだと思います  

 

▽まとめと疑問

 

 以上長々と書いてきましたが、大腸菌と大腸菌群は似たよう物なのだから、検査も大腸菌群だけでよいのではないか? とこんな疑問があるのですがどんなもんでしょうか。
 インターネットで調べた結果ですが、大腸菌(E.coli)が検出された食品では、大腸菌群が検出された物よりも、より人や動物などの糞便に汚染された可能性が高く、食品中の存在は直接または間接的に糞便汚染があったことを示すと考えられています。大腸菌群を検出した食品よりも一層不潔な取り扱いを受けたことが推測され、腸管系病原菌の汚染の可能性も高くなります。
 つまり 汚染度 大腸菌群<大腸菌(E.coli)とあらわすことができると思います。

 

▽参考文献

 

 ほとんどがホームページより検索しました。
 http://www.sanitation.co.jp/chudoku/kiso/kensa.html サラヤ株式会社様のホームページです。
 http://www.syo-k.co.jp/column/02a.html 株式会社消費経済研究所様のホームページです。
 http://www.wafoo.gr.jp/ordinary/food/coliform.html  wafooネット様のページです。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%85%B8%E8%8F%8C 百科事典ウィキペディア様のページです。
 http://www.mac.or.jp/mfa_file/daichoukin_kaisetu.htm  (財)食品分析開発センター様のページです。
 http://academic2.plala.or.jp/aigaku/biz/ken2.html (財)愛知県学校給食会さんのページです